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「本物に触れる時間」 ~価格と価値~

 

「安物買いの銭失い」ということわざ。「安いものは品質が落ちるので、買った時は得をしたように感じるが、すぐに壊れて使い物にならなくなるから、結局は高い買い物をすることになるということ」という意味ですが、100円ショップやファストファッションの登場によって、必ずしも安いものは品質が悪いとは言い切れない時代になったように感じるのは、私だけではないはず。

バブルが弾け(もう20年くらい前の話ですね。笑)リーマンショックが起き、経済が不安定になると将来への不安から財布の紐が堅くなり・・・なんて書いているだけで、何だか悲しい気持ちになるバッドスパイラル。経済的に余裕がなければ、気に入ったものを好きなだけ買うと言うのはまず難しいので、①どうしても欲しいもの、②必要だけど質が担保されていれば良いもの、③要らないものの3つにまずは大別するでしょう。②に該当するものが100円ショップやファストファッションでまかなえるものであればラッキーなご時世。生活必需品が100円で購入できたりファストファッションで毎日のコーディネートを楽しんだりするのは、私はとても良いことだと感じています。しかし、その感覚はいくつになっても通用するものなのでしょうか。

私が大学生の頃、オシャレをしたくても欲しい洋服は高くてすぐには買えない。そのために、頑張ってアルバイトをしてお金を貯めて買い物に出かけたものです。先輩や大人たちが持っているブランド品を見て、その姿に憧れ、「いつか私も!」と気合いを入れて、また働く(笑)。学生の頃は学校・部活(サークル)・アルバイトを行ったり来たりで、友達と遊びに行く時間が少なかった記憶が。それでも、自分が欲しいもののために、時間を費やすことに対して嫌な気持ちはなく、むしろ頑張ったご褒美として欲しいものが買える喜びの方が大きかったかもしれません。この「いつか私も!」という気持ちが、ファッション好きな私にとってずっと働く動機となっていたのは否定できません。でも、この動機こそが本物に触れる時間を生み出し、私の現在の価値観を構築するという意味で柱になっていると思います。

高価なもの、ブランドに価値があると思われていた(学歴すら高い方が言われていた。笑)時代もありましたが、人によって価格に対しての感じ方は様々。価格は万人にとって共通の指標ですが、価値は自分が決めるもの、自分が欲しいものが価値あるものなのではないかと思います。そして、アラフォーになりつくづく感じるのは、自分にとって価値あるものに囲まれている生活はとても豊かだということ。無駄や無理のないライフスタイルは本当に素敵。そんなライフスタイルの女性を見るたびに、以前は、ブランド品を持つ大人たちを見て感じた「いつか私も!」という気持ちに似た感覚を抱きつつ、今はではなくライフスタイルに共感できるようになった自分を、「あれから20年経って大人になれたなぁ」と嬉しく感じる瞬間でもあります。

価格や周囲の評価に囚われない、自分自身だけが認める価値あるものが何なのか。それは本物に触れたことのある人のみぞ知ることなのかもしれません。

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